興味の遺伝

行列の中には、怪し気な絹帽を阿弥陀に被って耳のお蔭で目隠しの難を喰い止めているのもある、仙台平を窮屈そうに穿いて七の紋付を人の着物のようにじろじろ眺めているのもある。フロックコートは、承知したがズックの白い運動靴をはいトげよドヒて、同じく白の手袋をコ寸見給え」と言わぬばかりに振り回しているのは奇観だ。
そうして二十人に、一本ずつくらいの割合で手頃な旗を押し立てている。大抵は紫にかる字を白く染め抜いたものだが、中には白地に黒々と達筆を振ったのも見える。この旗さえ見たらこの群集の意味も大概分るだろうと思って、一番近いのを注意がけゼんして読むと「木村六之助君の凱旋を祝す連雀町有志者」とあった。「ははあ、歓迎だ」と初めて気がついてみると、先刻の異装紳士も何となく立派に見えるような気がする。